木造注文住宅に大開口の空間を取り入れたい!構造や柱や壁の厚さをどう工夫する?メリット・デメリットについても解説

最終更新日 2025年06月09日

木造注文住宅に大開口の空間を取り入れたい!構造や柱や壁の厚さをどう工夫する?メリット・デメリットについても解説

開口部を大きくしたり、大規模な空間を取り入れて開放的な住まいをつくるにはどんな方法があるのでしょうか?
木造の注文住宅で大開口の住宅を建てるのは難しいイメージがあるかもしれませんが、建物の組み立て方や柱のスパンなどを工夫すれば実現可能です。一級建築士事務所 福島工務店の設計担当である福井子寧さんのお話をもとに解説していきます。

大開口の家とは?

特徴や魅力

「大開口の家とは、窓や出入口などの開口部を大きく設けた家のことを意味します。リビングの掃き出し窓をワイドタイプにしたり、吹抜けや勾配天井を設けて大きな空間をつくることによって開口部を広く確保することができます」(福井さん、以下同)

大開口の家の魅力は、なんといっても開放感と明るさ。大きな開口部から光が差し込み、部屋の隅々まで光が届きやすくなるのが特徴です。

木造の建築物では柱同士のスパン(間隔)を長く取ることが難しく、大開口の家をつくる場合は鉄骨造が有利とされていました。しかし、通常よりも強度のある構法・工法などを用いて大断面集成材を使用することで、木造であっても大開口・大空間の家を実現できるようになりました。

大開口のリビング
大型の掃き出し窓を採用すると、室内に光が入りやすくなる(画像/PIXTA)

【実例】木造で大開口・大空間を取り入れた新築注文住宅

詳しい解説に入る前に、福島工務店が手がけた大開口の住まいの実例を紹介します。家づくりのイメージを広げるための参考にしてください。

大きな窓と吹抜けを設けた大開口リビング

ワイドタイプの窓を設置したリビング。掃き出し窓の先にはウッドデッキがあり、リビングの延長空間として利用できます。

大きな窓を設けたリビングの実例
時間の経過とともに色に深みが増したり、手触りが変化したりするのが木材の面白さ(画像提供/一級建築士事務所 福島工務店)

また、リビングの上には吹抜けを設けて大空間に。アイアンの手すりを施したことで視線を遮らず、空間を広く見せることが可能です。

吹抜けの実例
吹抜けの天井近くに設けた高窓からも光が差し込む(画像提供/一級建築士事務所 福島工務店)

狭小地でかなえた明るく開放的な家

こちらは敷地面積21坪の狭小地で実現した大開口の家の実例です。19畳のリビングに大きな掃き出し窓を設け、プライバシーを守りながらも明るく開放的な住まいになりました。住んでから心地よさを実感し、家族そろってリビングで過ごす時間が増えたそうです。

狭小地で実現した大開口リビングの実例
狭小地とは思えないほど開放的なリビング(画像提供/一級建築士事務所福島工務店)

4mの吹抜けを設けた大空間

4mの吹抜けに大きな窓を設えたことで、光と風がたっぷりと注ぎ込む明るいリビングになりました。階段の手すりは圧迫感のないデザインにし、視線の抜けを意識。見通しのよい大空間のため、子どもの見守りやすさも魅力です。

吹抜けリビングの実例
天井の近くまで窓が並び、屋外からたっぷりと光が入る(画像提供/一級建築士事務所 福島工務店)

木造で大開口の住宅を実現する方法は?

木造建築で大開口の一戸建て住宅を実現するためには、いくつかの方法があります。

構造用集成材や接合金物を使用した構法で建てる(SE構法など)

日本の木造建築物では昔から在来工法(木造軸組工法)が広く使われてきました。一般的な在来工法では柱同士のスパンは6m以下が目安です。そのため幅6m以上の開口部をつくる場合は設計上の工夫が必要となります。その点、構造用の集成材や接合金物を用いると木造でも壁や柱を少なくして大きな空間をつくることができます。

このような大空間をかなえる構法・工法はいくつかありますが、そのひとつがSE構法です。SE構法を用いると、最大で8.4mまでスパンを飛ばすことが可能です。

SE構法と他の工法で可能な開口部の幅
SE構法の強みは、他の工法よりも開口部を大きく設けられること(イラスト/いぢちひろゆき)

一般的に、RC造や鉄骨造の建築には、柱と梁(はり)を剛接合で強固に一体化する「ラーメン構法」という方法が用いられます。SE構法は木造住宅でラーメン構造を実現する建築方法です。SE構法は、特殊な金物と木材を使い、在来工法よりも接合部の強度を上げているのが特徴。強固な耐力壁で耐震性や耐風性を備えた木造建築物をつくることが可能です。

「SE構法を木造住宅に用いる場合、大空間をつくる目的で採用することが多いです。高い強度を保てるので、壁の少ない大空間を高耐震でつくることができます。例えば、大きな吹抜けや視線が抜ける壁のないリビングなど、ダイナミックな空間を住まいの中に取り入れたい場合は、SE構法を選択肢の一つにするとよいかもしれません」

SE構法を用いて家を建てる場合、一般的な在来工法と比較すると費用が高くなる傾向にあります。大開口の家をつくる場合、SE構法を用いる以外にも選択肢はあるので、建築会社の担当者に希望を伝えて相談してみましょう。

在来工法とSE構法の違い
柱と基礎を特殊な金物で強固に接合するSE構法。大きな開口部のある家づくりにも適している(イラスト/いぢちひろゆき)

SE構法についてもっと詳しく→
開放感抜群! SE構法で建てる、木のおうち

大開口が得意な建築会社を探すならこちら→
[大開口]で探すハウスメーカー・工務店

また、在来工法に次いで木造でよく用いられる2×4(ツーバイフォー)工法は、木造壁式工法とも呼ばれ、面で構造体をつくる建築方法です。2×4の場合、壁の強度を保つために一定以上の開口部をつくることは難しく、使用する材料によっても変わりますが、開口部は4m以内の幅が一般的です。

木造軸組で建てるなら、強度の高い耐力壁を配置する

在来工法を用いて木造で大開口の空間をつくる場合、耐震性を高める工夫が必要です。強度の高い耐力壁を配置することにより、耐震性を保持しつつ、最大約4.5mの間口を実現することができます。

ただし、設計によっては耐力壁の配置やサッシの位置に制限が生まれる場合も。また、耐力壁の厚みによって空間が狭くなってしまう場合もあります。建築会社とよく相談し、設計を考えていきましょう。

木造で大開口の家をつくるメリット

鉄骨造・RC造よりも費用を抑えられる

大開口や大空間を実現するには鉄骨造・RC造が主流ですが、木造と比較してコストがかかります。木造で大開口や大空間をつくるためには設計上の工夫が必要になりますが、コストを抑えられる点はメリットといえます。

意匠性と開放感

木造ならではの温かみに、大開口をプラスしてデザイン性を高めることができます。ダイナミックな窓があると家の内外につながりが生まれ、開放感を演出することが可能です。また、視線を遮る壁が少なくなることで、視線が抜けて空間を広く感じることができます。
大きな窓からは光がたっぷりと入り、明るい空間になるでしょう。

大開口リビング
リビングに大きな開口部を設けると、屋外の風景をダイナミックに望むことができる(画像/PIXTA)

木造で大開口の家をつくるデメリット

暑さ寒さ対策が必要

大きな開口部から熱が出入りしやすいため、夏の暑さと冬の寒さには注意が必要です。また、吹抜けや勾配天井の大空間にすると、熱が上に逃げてしまい冬は寒くなります。住まいの断熱性を高め、適切な対策をしましょう。

寒い部屋のイメージ
大開口を取り入れるなら、家の断熱性が重要(画像/PIXTA)

設計によっては外から室内が見えやすくなる

大開口の家は窓を大きくする場合が多いため、開放的で明るい空間になります。しかし、外から家の中が見えやすいというデメリットがあります。外構を工夫して見られないようにしたり、防犯面での対策が必要になります。道路の位置や隣家との距離など、家を建てる土地の特徴もよく把握してから家づくりを進めたほうがよいでしょう。対策については注意点やポイントで紹介します。

木造注文住宅に大開口の空間を設けるときの注意点やポイント

大開口の空間を設けるときには気をつけたいことがいくつかあります。家づくりを始める前に押さえておきましょう。

耐震性を確保するために、構造計算はしっかりと行う

上述したとおり、大きな間口を設けるときは耐震性に影響が出るため、適切な構造計算が必要になります。
2025年4月以降は、建築基準法の改正により、ほとんどの木造一戸建て住宅で建築時の構造計算が義務になります。これにより、大開口の空間を取り入れる場合でも安全性が証明されます。

構造計算と耐震性のイメージ
適切に構造計算がなされないまま木造で大開口の家を建てると、大きな地震があったときに影響を受けるかもしれない(画像/PIXTA)

断熱性能や暑さ・寒さ対策に留意する

「熱は窓から出入りします。大きな窓を採用する場合、それだけ熱が入りやすく、また逃げやすくなるため、断熱対策をしっかりと行うことをおすすめします」

住まいの断熱対策として、サッシの種類を樹脂製のものにする、寒冷地域では窓ガラスを三重の複層ガラスにする、ハイグレードの断熱材を使用するといった方法が挙げられます。

「吹抜けをつくって大開口の空間にすると、どうしても冬場に寒さを感じやすくなります。寒さ対策として、シーリングファンが有効です。天井にシーリングファンを設置することで暖かい空気を床面まで下ろすことができます。また、空間全体での気流を意識して吹抜けの位置を決めるなど、専門的な視点をもって設計することもポイントです」

吹抜けとシーリングファン
シーリングファンで空気を攪拌(かくはん)し、冬は部屋を暖かく保つことができる(画像/PIXTA)

大きなサッシは高額になりやすい

大開口のサッシやたくさんの窓を設置する場合、費用面でも注意が必要です。標準的なサッシと比較すると、数十万円、サイズや性能、数によっては数百万円以上も金額が上がってしまう可能性があります。
家づくりの予算が決まっている場合は、サッシの大きさや数は慎重に計画したほうがよいでしょう。

大開口の家の模型と費用のイメージ
大きなサッシを設ける場合は、予算と相談を(画像/PIXTA)

家の外から見られない工夫をする

「大きな窓があることで外側から室内を見られやすくなり、防犯やプライバシーのことを考えると対策をしたほうがよいでしょう。
窓の位置を高めにしたり、外構の植栽やフェンスで目隠しをつくると効果的です。また、大きな窓のある空間を道路に面した場所に配置しない間取りの工夫や、都市部の狭小地の場合は外から見えない中庭に面したリビングをつくるなどの手法もあります」

中庭
大きな開口部が中庭に面していれば、家族のプライバシーを守ることができる(画像/PIXTA)

木造の大開口の家が得意な建築会社を探す

木造で大開口の空間をつくる場合は特殊な技術が必要です。過去に木造で大開口の空間を建築したことがあるハウスメーカーや工務店を探したほうが、幅広い提案をもらえる可能性があります。

「建築会社といっても、在来工法またはSE構法だけやっている会社もあれば、両方を手がける会社もあります。また、都市部の建築に慣れている建築会社なら、狭小地で大開口の家を建てることにも慣れているでしょう。その建築会社の得意分野や建築エリアなどをチェックした上で契約すると満足度の高い家づくりにつながるかもしれません」

木造住宅に大開口を取り入れたい場合は、信頼できる建築会社に相談を

最後に、大開口の木造一戸建て住宅を建てるときのポイントについて福井さんに伺いました。

「一戸建て住宅に大開口を取り入れると、高級感や開放的な雰囲気を加味することができます。大開口の木造住宅をつくりたい場合は、建築の方法に工夫が必要です。コスト面や耐震性のことも含め、信頼できる建築会社を見つけてぜひ相談してみてください」

まとめ

木造住宅に大開口をつくる場合は設計の工夫が必要

構造計算に基づき耐震性の高い家をつくることや、断熱対策が重要

大開口の家の施工実績が豊富な建築会社に依頼すると安心

注文住宅の会社を探す
土地を探す
新築一戸建てを探す
中古一戸建てを探す
カウンターで相談する
ハウスメーカーを探す
工務店を探す
賃貸物件を探す
リフォーム会社を探す
中古マンションを探す
新築マンションを探す
売却査定する
引越し見積もりをする
取材・文/佐藤愛美(りんかく)イラスト/いぢちひろゆき
関連する最新記事を見る
住みたいエリアや購入価格からマンション・一戸建てを探そう!
住まいの種類
住みたいエリア
  • エリア
  • 都道府県
  • 市区郡
購入価格

お役立ち講座・個別相談のご案内無料

住まい選びで「気になること」は、人それぞれ。スーモカウンターのアドバイザーは、新築マンション選びと会社選びをサポートします。講座や個別相談を通じて、よかった!と思える安心の住まい選びをお手伝いします。
カウンターアドバイザー

住み替えサポートサービス

ページトップへ戻る